JGTO 海老沢会長インタビュー

インタビュー1 「挑戦と貢献」のスローガンを掲げ4年目を走る。 さらなる変革と社会貢献を推進

JGTOを率いて丸3年が経過。ゴルフ界を取り巻く環境は依然厳しい中で試合数の減少にも歯止めがかかり、ツアーを戦うゴルファーたちの意識にも変化が見え始めた。
今後さらなる隆盛への取り組みとファンの獲得、選手の強化など様々な課題に向かう4年目の展望を伺った。

― JGTO会長に就任されて4年目を迎えますが、今シーズンへ向けた抱負などをお願いします

丸3年間、会長の任に就いてきましたが、いくらか景気の回復が見えてきたのかなという感じがしております。ただ、実体としてはまだ我々のところへは反映できていない。バブルがはじけて不景気になり、それが20年ほど経過しています。他のスポーツや一般社会もそうですけれど、経済が安定して成長していけば当然、国民の生活も豊かになりますし、そうならないとゴルフにも関心を示せないどころか、日々の生活に追われるばかりでなかなか参加できない。そのためにはできるだけ経済が再生して景気が良くなるということが一番大事だろうと思っています。景気が良くなる傾向は若干見えるようになってきたように思いますが、世界の情勢というものもありますので予断は持てませんし、これ以上は悪いことにはならないだろうという希望を持ちながら取組んで参りました。景気が良くないからといって、ただ手をこまねいて生活が豊かになるのを待っているというわけにもいきません。当然、我々にはプロゴルファーとしてやるべき仕事、社会に対してどのような貢献をしていくのかといういろいろな役割、使命というものがあるわけです。いわゆるゴルフ界を活性化させるためには、経済回復と同時にファン、大衆を魅了し、ゴルフをやってみたい、あのようなプロゴルファーになりたいと思えるような夢と希望と勇気を与える、感動するようなプレーを見せていくことが大事です。そのためにはやはりスタープレーヤーが一人でも多く出てこないとそうしたムードが盛り上がってこない。 民間のスポンサードトーナメントが始まって55年になりますけれども、いずれにしてもファンあってのゴルフであり、スポンサーを始め多くの関係者の支援協力がなければ成り立たない立場であるわけです。そこで優れた、礼節を重んじた礼儀正しい選手を一人でも多く育成するということで、いろいろな取組みを3年間やって参りました。今、若手の育成も順調に進んでおりますし、選手会と連携を深めながら一緒になって選手全体でルールを守り、エチケット、マナーをきちんとやろうと襟を正しているところです。そしてやはり「お客様は神様だ」というような精神と申しますか、見本となる助け合いと思いやりの精神を持ってやっていけば必ずファンもついてきてくれるだろうとやってきて全体の空気はかなり良くなったと思います。それをさらに前に進めることによってゴルフ界も大分変わったなと言われるようにしていきたいというのが目標です。

― そうした中で今季は3試合増えて賞金総額もアップしました

主催者、スポンサーの方々にもゴルフ界を盛り上げていこうとする空気に少しずつなってきているように思います。私は以前から30試合くらいにはできるという目標を立てております。今年は国内で2つのトーナメントが無くなりましたが3つの試合が増えました。そうしたところでも少しずつは変わってきたのかなと感じています。それと同時に国内だけでは無くて、やはり世の中は国際化時代でサッカーのワールドカップでもオリンピックでもそうですが、やはり一流の選手が揃う場面での活躍が無いとなかなかファンもついて来ません。そうした国際化時代、プロスポーツ時代になって、我々もそうした環境を勉強し、把握すると同時に、特に近い国である東南アジアを中心としたアジア太平洋地域にもっと目を向けていこうと。これまでもインドネシアとタイでコーサンクションの大会を開催してきましたが、今年はマレーシアがひとつ増えました。それで海外が3試合。国内と合わせて27試合となりました。もうひとつはシンガポールオープンを開催しようという話がまとまって、来年1月には開催することが決定しています。その他でもアジア各国とコンタクトを取っておりまして、できれば来年1試合2試合、もっと増やしていきたいという話し合いを進めています。

― 選手の強化、オリンピックを目指してという視点で今年も宮崎での合宿を実施されました

相撲で言うところの「心技体」。ゴルフも体をきちんと作り、技術を磨き、その中で心の強さを追求しなければならないスポーツですので、もっと基本をきちんと叩き込まなければいけない。そのためには強化合宿というものをやって互いに切磋琢磨する機会を作ろうと。そもそもゴルファーは個人事業主ということで、団体でトレーニングをする機会が無い。あってもプライベートや仲間内でやっている状況です。そこで組織的にやってみてはいかがかという意見がありました。個々人でやるのも良いのでしょうけれど、ゴルフも来年112年ぶりにリオデジャネイロのオリンピックで正式競技となりましたし、日本でもオリンピックをやろうということになっているわけですから、我々も大きな目標、オリンピックを目指すということで、もう一度、原点に立ち戻ろうと。そこで3年前に宮崎は非常に暖かくて、ちょうどプロ野球もキャンプを張る時期でもあって、宮崎のフェニックス・リゾート・シーガイアに協力を要請したところ、快く応じてもらえました。
宮崎合宿では選手会の理事達が参加者に向けて講義を行った

宮崎合宿では選手会の理事達が参加者に向けて講義を行った

技術だけではなく基礎体力と精神性を強化する
これは泊まり込みで生活習慣からきちんと勉強をしていこうということで、5日間連続した合宿として専門家の指導も受けてもらう内容です。1回大体24人の構成で3回実施しますと72人ですから、この3年で200名余が体験したことになります。昨年から選手会からも池田選手会長を始め、理事の幹部選手にも選手会として目指すところのお話をいただき、青木功選手、中嶋常幸選手、髙橋勝成選手というレジェンド・プレーヤーにも、直接技術的な指導や精神的な心構えなどをきちんと教えていただきました。皆、そういう経験は初めてなんです。それとルール説明やゴルフファンとの関わり方、アンチドーピングの話、ゴルフ界の現状なり選手としての心構え、ゴルフの歴史などを体系的に知ってもらうセミナーも行いました。それと我々はアマチュアの育成も大事なので、今年から日本高等学校ゴルフ連盟の協力も仰いで高校生ジュニアの参加受け入れを行いました。1回あたり4名で計12名の参加です。12人の選手は高校生の中でもレベルの高い生徒。3回の合宿ともプロに混じってプレーをすると24人中5位以内には 誰かしら入ってくる。普通のプロよりうまいし飲み込みが早いです。ただ全体的に体力不足なんですね。プロの世界も含めて4日間、体力を維持して戦うのは非常に大変でなかなか2勝3勝するのは困難な状態です。海外へ出ても体力不足で続かないという人が多かった。基本的な体力強化を図らないと、テクニックだけでは世界的なプレーヤーにはなれないということです。それに普段から礼儀作法を踏まえて、八百長やドーピングの忌避、マナーやプロ意識など厳しくしないと信用を無くしてしまいます。そうしたものは若いうちから教えないといけません。ですから3年やってきたセミナーというのは「継続は力なり」ということで、これからも続けていくつもりです。
16歳の高校生は、東京オリンピックが5年後といっても21歳。18歳だったとしても23歳。今の高校生が一番油の乗った時期になるのではないでしょうか。私はあまり悲観をしていませんが、こうしたいろいろな指導をすることによって期待できる良い選手が育つと思っています。
強化セミナー初日に駆けつけ参加者に激励をおくった宮里優作選手

強化セミナー初日に駆けつけ参加者に激励をおくった宮里優作選手

― 良い選手を育成する為に必要な事は

この点はトレーナーやコーチの地位を高めなければならないと思います。日本ではプロを指導する人たちが非常に少ない。ご承知のようにアメリカではプロを指導するプロがおります。日本のサッカーでも監督はほとんどが外国人。日本の場合は全体的に指導者の育成に関して組織的な体制になっていない。私に言わせればそうした人に対する待遇が非常に悪いのではないかと思います。もっと報酬をきちんとして社会的な地位を高めなければ良いコーチは出てこない。指導者をきちんと育成して、その人たちに応分の対価を支払うようにして、お互いに潤うというシステムにしていかないと。個人レベルの才能だけでは世界に伍していける選手も今や生まれようがない。選手とトレーナー、コーチというのは信頼関係も大事になりますが、そういう信頼関係をきちんと築けるためにきちんとコーチ業として食べていけるだけの報酬と地位が補償されなければいけないと思います。テニスで世界に頭角を現している錦織選手も万全の環境がありますよね。
今年3年目を迎えた宮崎合宿(JGTOゴルフ強化セミナーin宮崎フェニックス・シーガイア・リゾート~オリンピックを目指して~)は3人のレジェンド(左から青木功選手・中嶋常幸選手・髙橋勝成選手)を 特別講師に招いて、より一層の充実をはかった

今年3年目を迎えた宮崎合宿(JGTOゴルフ強化セミナーin宮崎フェニックス・シーガイア・リゾート〜オリンピックを目指して〜)は3人のレジェンド(左から青木功選手・中嶋常幸選手・髙橋勝成選手)を 特別講師に招いて、より一層の充実をはかった

― ファンの注目を引き付けていくためには

相撲には昭和30年くらいから関わっておりますが、やはりどこの業界、組織もそうですが20~30年経つといろいろと問題が出てきます。マンネリ化してしまう。そういう時にいち早くそれを見越して改革を進めるだとか、変えることができるかどうかで差が生まれます。時代の変化に対応できない時におかしくなる。相撲は千何百年という歴史があります。その間、いろいろな変革をしてきている。伝統など変えてはいけないものと変えなければならないものの両方があります。相撲も危機的な状況になって、中止になるとかお客様が減ってきているとなると、親方衆や関係者がこれはもう大変だと大きな危機感を持って本気になる。そんな時になんとかなるだろうというやり方が一番怖い。まず一生懸命やっているということと、ファンに対するサービス精神、ファンとの触れ合い、交流は大事です。それと社会貢献として人知れずボランティア活動もやっています。我々も東日本大震災についての支援に繋がる活動をいろいろとやっておりますが、そうした事を含めた触れ合いの中で信頼されていく。そういうスター選手と握手をしたりすれば一生残る記憶となります。ですからできるだけファンと接する。日本のプロ野球が一時駄目になった時、選手がサインをしないとか、質問にもおざなりで投げやりな態度が目立っていた。嫌々ながらやっているのかどうかはすぐにわかります。そうしたものの積み重ねが響いていました。どうしてもスターになると鬼が出てきます。そうした鬼が出てこない長嶋、王選手は、だから大スターなんです。いつでも誰に対しても同じ姿勢で接する。なかなかできないことですけれど、それができるから大スターなんですね。
スナッグゴルフ体験会やサイン会などでファンの方々との触れ合いを大切にする選手達

スナッグゴルフ体験会やサイン会などでファンの方々との触れ合いを大切にする選手達

相撲でも礼に始まり礼に終わるということがあります。審判の判断には潔く従うと。それに対してあれこれと言い返すという不様は日本人の性格に合わない。我々もできるだけ真摯に選手がファンの要望に応えてサインをするだとか、いろいろとできることをやろうと。そうすることでファンの信頼を勝ち得ていこうと思っています。

― 現在行われている社会貢献活動は

先ほど申し上げた東日本大震災に対する支援活動と、その他に3ツアーズでのチャリティや青木功選手らのレジェンドチャリティからの協力、それと震災に関連していわゆる東北の被災3県の学校へ訪問して各選手がスナッグゴルフの指導なり交流を通じて子供達を励ますという事を続けています。それと選手会からは被災3県に軽自動車をそれぞれ10台ずつを提供することを決めています。その他、各トーナメントのレジストの時に募金を集めておりますし、ゴルフフェアでは選手の使用品を出してもらってオークションで寄附を募ったり。高松宮妃ガン研究基金へも選手会とともに寄附を行っています。そうしたことなどで収益金はできる限り社会貢献活動として寄附させていただいています。こうした活動は今後も継続して行きます。