舩越園子のWorld Golf FUN FAN REPORT

最近、“走り方”が異なる欧州ツアーと米ツアー

取材 ・ 文 ・ 写真/舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

賑わいを見せる米ツアー

賑わいを見せる米ツアー

 長い間、ゴルフ界にとって五輪開催の年は「ゴルフルールが見直される年」だった。もちろん、それは今でも変わらない。実際、リオ五輪が開催される今年は「アンカリングが禁止になった年」。だが、今年は「ルール見直しの年」というよりも「ゴルフの五輪復活の年」という大きな認識を抱き、ゴルフ界全体が活発な動きを始めている。

 各国ツアーのスケジュール調整など五輪と直接関係のあるところで様々な動きが見られるのは当然のこと。だが、五輪とはあまり関係のないところでも今までとはどこか異なる勢いや元気が感じられるところが興味深い。

 今年の年明けから欧州ツアーが積極的な改革路線を2つも打ち出し、世界のゴルフ界を驚かせた。1つはスロープレー対策、もう1つは選手のドレスコードに関する大きな変更。どちらも発表と同時に実施に踏み出したため、より一層、周囲を驚かせた。

しびれを切らした欧州ツアーの独自路線

 欧州ツアーが打ち出したスロープレー対策は「モニタリング・ペナルティ」という新しい言葉に象徴される。1ショットに対する選手の持ち時間は40秒(同組内で最初に打つ選手はプラス10秒)だが、その時間をオーバーして「アウト・オブ・ポジション」になった場合、欧州ツアーはその選手に「モニタリング・ペナルティ」を言い渡すと決めた。

 モニタリング・ペナルティは、その効果が1シーズン持続するところが新しい。ひとたびモニタリング・ペナルティを言い渡されると“言い渡された選手リスト”に名前が載せられ、公表される。そして、1シーズン中に2度目を言い渡されると、2600ユーロ(=約30万円)の罰金。その際も“罰金を科せられた選手”として公表される。

 スロープレー改善は、プロ、アマを問わず世界のゴルフ界の長年の課題で、近年は世界6大ツアーが協力し合い、スロープレー撲滅キャンペーンに取り組んできた。しかし、その効果はなかなか表われず、歯がゆい状態が続いていた。欧州ツアーはその足踏み状態にしびれを切らし、名前を公表することによる見せしめ効果やスロープレーをお金で解決する強制効果を狙いつつ、常習的なスロープレーを1シーズンを通して改善させていくという新施策を打ち出し、今年の初戦となったアブダビ選手権で発表した。

 そして、すぐさま実施に踏み切ると、世界ナンバー1のジョーダン・スピースがいきなりモニタリング・ペナルティの対象になった。もちろん、それは偶然ではあったが、新施策の“宣伝効果”は抜群で、欧州ツアーにとっては「渡りに船」の展開になった。後日、同大会でモニタリング・ペナルティを“言い渡されたリスト”が公表された。スピースを筆頭に5人の名前が記され、「もう1度、言い渡されたら罰金です」と付されていた。

 その数週間後。米ツアーのルール・オフィシャルに「欧州ツアーのモニタリング・ペナルティをどう思うか」と直撃してみたら「まだ勉強不足で正確に内容を把握すらしていなくて、よくわからない」と、苦笑いしながら、はぐらかされた。

ファウラーと短パンのキャディ ファウラーと短パンのキャディ
全米OP地区予選は選手も短パンOK 全米OP地区予選は選手も短パンOK

欧州ツアーは短パンOK。米ツアーは認めない!?

 アブダビ選手権で欧州ツアーがいきなり発表し、実施したもう1つの新施策は選手の短パンを練習日とプロアマの日だけ認めるというドレスコード変更だった。選手たちの反応はすこぶる良好で、ローリー・マキロイもイアン・ポールターも短パン姿で嬉々として練習を行い、ギャラリーも選手たちの見慣れない短パン姿を楽しげに眺めていた。

 これまで欧米両ツアーは選手の短パンを認めていなかった。今回、欧州ツアーだけが先行して短パンを許可したことになるのだが、ある米ツアー関係者は「それは米ツアーでは起こらない」と米メディアに非公式に答えたそうだ。そこで米ツアーのメディアオフィシャルを直撃取材してみると「PGAオブ・アメリカから独立してPGAツアーが創設された60年代当初から選手のロングパンツ着用は明記されている。ロングパンツは選手のユニフォームゆえ、変わることはない」。

 なるほど。ユニフォームと言えば、つい先日、米ツアーのキャディたちがビブの着用義務を巡って集団訴訟を起こし、敗訴した。裁判では「ビブは試合会場におけるキャディのユニフォームの一部」という主張が認められ、米ツアー側の勝訴となったばかりゆえ、「ユニフォーム」はオールマイティな言葉のように聞こえなくもない。

 だが、どこの世界を眺めてみても、60年代から変わっていない古典的ユニフォームは極めて稀だ。もちろん、それが本当にいいものなら、それでいい。だが、時代の変化やニーズに即して何かを変えていくべきなのだとしたら、「善は急げ」であろう。

 どうも最近、欧州ツアーのほうが上手に駆け足している感がある。余裕の笑顔で先を行くのは米ツアーのオハコだったはず。米ツアーの「らしさ」をそろそろ披露してもらいたいものだ。