PGA倉本昌弘会長インタビュー

検証とプランニング提案の1期を終え、
2期目は「DO」を牽引する

PGA会長に就任される際に、組織改革・制度改革・意識改革の3つの大きな柱を掲げた「経営マニフェスト」を発表し、PGAの諮問機関「経営戦略会議」からの「ゴルフ市場再生活性化に向けた新たな提案」を経て経営戦略委員会の立ち上げ、コンプライアンス委員会も積極的な活動を続け、PGAゴルフアカデミーも2年目を迎える。シニアツアーも新規開催の4試合を含め17試合は23年ぶりの15試合超え、賞金総額8億7千万円は24年ぶりの8億円超えで史上3番目の高額となる活況を呈している。8月にはリオ五輪で、2020年には東京五輪でゴルフ競技が開催され、ますますのJGA、JGTO、LPGAの競技ゴルフ団体との連携連動協働が必須となってきている。1期2年を務めあげた今、2期目となるこれからの2年へ向けた構想を伺った。

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─ 1期2年を務めた今の感想をお願いします

ざっくりで言いますと、そもそも私はPGAの会長になるとは全く思っていませんでした。将来的にJGTOの会長になる可能性はあったとしてもPGAの会長になることはないだろうなと。それがPGAの不祥事問題がきっかけとなり、会長を引き受けることになりました。引き受けた以上は当然、今後のPGAが何をしていくべきかを具体的に示さなければなりません。そこでまずはJGTOではできなかった底辺の拡大こそPGAが果たさなければならないことであると。これは選手たちの集まりの団体と、全国に約5,500人の会員が存在している中で活動している団体との違いということがあって、PGAとしてやるべきこととはやはりゴルフ界の底上げだろうということで、マニフェストや提言書といったものを提出させてもらいました。それに基づいてDOの部分をやりましょうというのが、この2期目です。1期目は会員たちと意見交換を行うとともに、ゴルフ界の現状やどういう問題点があるのかなどの調査を行いました。トーナメントに関わる部分については熟知しているつもりですが、この2年間はゴルフトーナメント以外の問題点に目を向けて調べることに必死でした。PGAでやろうとしている部分については知らないものが多く、その意味では非常に苦労しました。

─ そして2期目を迎えます

行動を起こすのがこの2期目だと思っています。考える時期も終わったし、プランを立てる時期も終わりました。次はDOにとりかかる時です。昨年6月にPGAゴルフアカデミーを立ち上げていますが、これから時間をかけて軌道に乗せていきます。アカデミーというものは始めたからといってすぐに軌道に乗って、うまく運営できるというものではありません。これから我々の根幹事業の一つになっていくものですから、これから5年、10年とかけて軌道に乗せていくものだと思います。また、近く記者発表を行う予定ですが、提言書に基づくゴルフ人口拡大のための具体的施策の一つとしてビジネスモデルを提示し、テストマーケティングを実施します。それを見ていただいて、興味をもって一緒にやりたいというところが出てくれば一緒にやりましょうということです。DOと言いましてもPGAの根幹事業にしようとする事は時間がかかります。それにゴルフ業界の発展は、人間のようにカンフル剤を打てばすぐに元気になるというものではないと思っているので、少しずつ浸透させていきながら、時間をかけてやるというのが次の2年だと思っています。

─ 記者発表されるビジネスモデルについて、今、言えることはどのようなことでしょう

テストマーケティングは関東1施設、関西1施設で実施するということをまず発表します。関東は加藤農園ゴルフリンクスの練習場を使わせていただいて、関西は桜宮ゴルフクラブという練習場です。ビジネスモデルの内容は、これからゴルフを始めようというお客様から、ある一定の金額をいただき、こちらからは練習場やコースでのレッスンや個人練習、用具の使用などのサービスを提供し、1年間の間にラウンドできるようにお手伝いしましょうというプログラムです。

─ それで、何人くらいの方を受け入れていく予定でしょう

テストマーケティングとして関東、関西各1施設での実施なので、約300人くらいだろうと思っています。本来は練習場3施設、PGAのティーチングプロ10人、ゴルフ場1施設で1つのユニットを組み、1つのユニット1,000人から1,500人くらいを目標にしています。そして、このユニットを5年後には50くらい作りたいと考えています。

─ それは初めてゴルフをされる方だけが対象ですか

はい。ゴルファーを増やすことが目的ですから、基本的には初めてゴルフをしようという方に来ていただきたいパッケージです。最終的には500ユニット作ることを目標にしていますが、100%達成できなくても、仮に6割、300ユニットを達成できたら、年間45万人くらいの新規ゴルファーを創造できますので、かなりの底上げができるかと思います。

─ 大学でゴルフに接しながらもその後は止めてしまっている層も結構いるようですが

今、550校くらいが体育の授業にゴルフを取り入れていて、生徒数が10万人くらいいるとのことです。しかし、ゴルフの授業を受けた学生のほとんどが、その後、ゴルファーになっていないのが現状です。これは非常にもったいないことなので、ゴルフの授業を受けた学生をゴルファーに育て上げていこうと考えています。先ほどの新規ゴルファー創造のプログラムやユニットとは別に考えており、大学の授業に適合するプログラムの提供など、大学側と折衝しながら進めていく予定です。

このほか、企業にも福利厚生の一環としてゴルフを取り入れませんかという提案をしていくことにも着手しようと思っています。今、多くの企業はバブル以降、自らの福利厚生施設を保有するケースが無くなってきており、施設を持っている会社と提携しているケースが多くなってきています。そこで、その福利厚生を請け負っている会社とタイアップをして、たとえば都内の練習場を10施設、千葉のゴルフ場を10施設、我々がまとめて、そこにはPGA会員のレッスンもついていますので、提供する福利厚生の一環にできませんかと。

つまり、ひとつひとつに着手ということではなく、多くのところに着手していこうと思います。手数を増やして、それも有効な手数を打っていかないと、実際には増えていかないだろうと思いますので。今までのゴルフ界は有効な手数をなかなか打てなかった。いろいろな案や意見を言う方は多いのですが、実際に行動に移されましたかと聞くと、ほとんどが行動していない。ゴルフ場単位や練習場単位で考えた案を個別に実施しているところもありますが、すべてが点でしかありません。点はいくら集まっても点でしかありませんから、やはり点と点を結んで線にしていかなければ、集まった時に大きなものになっていかないと思います。

─ PGAゴルフアカデミーは2年目となりますが、特徴はどのようなものでしょう

PGAゴルフアカデミーには3つの柱がありまして、ひとつは一般のゴルファーに寄り添うもの。そしてジュニアの育成。これは子供たちにゴルフを教えると同時に、ゴルフを通じていろいろなものにも関心を持たせ、ゴルフ場で学びながら育成につなげていこうとするものです。もうひとつはPGA会員の研修の場、つまり会員のスキルアップのためのアカデミーであることです。実際に5月から会員を対象としたゴルフ場支配人養成セミナーというものが始まっていきます。いずれはゴルフ練習場も含めて取り組んでいかなければならないと思っていますが、まずはゴルフ場の支配人からということです。このセミナーを修了した会員には、PGAとしてゴルフ場に職場をあっせんし、ゴルフ場の幹部候補生として入っていただくというものです。今後は、ゴルフ場の支配人だけではなく、JGGAと提携した物販の講習や、芝草管理の講習などもアカデミーを通じて行われていくようにしたいと考えています。


今年2年目に入ったPGAゴルフアカデミー

今年2年目に入ったPGAゴルフアカデミー

特別企画として倉本会長のラウンドレッスンが行われた

特別企画として倉本会長のラウンドレッスンが行われた

─ さまざまな改革を進める上で、他団体との協力協働も必要かと。青木功新会長が誕生したJGTOとの関係性は今後どのようにお考えでしょう

昨今ではJGTOとPGAが分かれた時のことを良く知らない方も増えてきております。経緯をひも解きますと、もともとはPGAの中にツアーディビジョンを創ろうとなりました。これはGTPAも含めて皆さんで合意しました。それがその後にいろいろとあって、その部門が外へ出ざるを得なくなったというものです。当時、JGTOとしてはPGAツアーを使いたかったけれども使えなくなった。そうした経緯があるので、私は今のJGTOにはPGAツアーを使って欲しいと思いますし、我々、PGAとしても是非使って欲しいと思っています。アメリカはPGAツアーを使っていますが、世界のツアーが皆、PGAツアーを使っているかというと今はそうではありません。ただ、アメリカPGAツアーという強力な存在があると、やはりPGAツアーイコール、ゴルフのツアーと世間の人たちは思っています。JGTOが設立されて17年が経過しましたが、世界的にJGTOイコール日本のゴルフツアーとの認識が定着していません。ブランド認識が定着しているのならJGTOでいいと思いますが、現状では日本の一般の方ですらJGTOとPGAとJGAの区別もつかない。それであればネームバリューのあるPGAというブランドを使ってもらった方が有効ではないかと思うのです。

─ 今年はいよいよオリンピックです。強化委員長もされておりますが、今どのような取り組みを

まずは強化委員長として何ができるかですが、基本的に今の選出方法では何もできません。7月11日に選手が決まって、8月11日から試合が始まるという状況の中で強化などできるはずもありません。現時点ですと松山選手と池田選手が代表候補ですが、その二人の強化を誰がどのようにやっていくのかなどは現実として無理な訳です。そのためリオに関してはある程度選手に任せるしかありません。我々が何かできるとすれば東京五輪に向けてだろうと思います。まず、選手の選出方法であるとか、競技方法について助言ができるのではないでしょうか。今の競技方法では面白くないですし、選手の選出方法も今のままでは我々として何も関われません。そうしたところを東京五輪に向けて話を詰めていく。選手の強化については、今の選出法ではワールドランキングで選ばれますので、アマチュアが出場できることはありません。そうであればアマチュアが関わっているところが主体で動いても無理ではないかと思います。そこでプロの組織を関わらせて欲しいということで、私とLPGAの小林会長が入ったというところはものすごく前進したところであると思っています。今後はその点をうまく動かしていけたらと思っています。アマチュアも我々に育成をさせて欲しいですし、ナショナルチームも我々に見させていただくと随分と違ってくるのではないかと思います。今、アマチュアにはオーストラリアのナショナルコーチが付いていますが、彼らはあくまでもスイングコーチであって、実践の経験がありません。逆に我々はスイングコーチではありませんが実践経験のあるコーチな訳です。これらが融合しないと選手は強くなりません。スイングばかりを練習していても、いざコースへ行くとそれではまったく何もできないという状況もおきます。そうしたことからもスイングと実践がうまく合致することで良い選手が育ってくると思いますので、そのあたりを今JGAにお願いしているところです。

─ 競技の方へ話を変えますが90年前にスタートした日本プロゴルフ選手権ですが今年も何か特別な趣向があるとか

発表していることでいえば、バンカーは選手やキャディにはならさせず、PGA側でならします。そのためにイギリスからバンカーレーキを100本買いました。そして、バンカーはあくまでもハザードであるという趣旨のもと、平らにはならさないということをやろうと。日本プロ選手権を見て、レギュラーツアーでも同じことをやりたいというところがあればバンカーレーキを貸し出します。日本プロ選手権では今後も継続していくこととして始めます。

─ シニアですが今年は4試合増で17試合ですね

私が会長を務めてからですと7試合増えました。去年、3試合増え、それを見た選手たちが関心を持っている企業なり、人の情報をくれるようになりました。その情報元に出向いて我々がご説明をして「こうしたこともできます」「こうすればこうもできます」というようなプレゼンをした結果、試合を開催していただくことが決まる、という流れができてきました。

─ シニアの試合を見る側からの面白さ、工夫は何かありますか

シニアで特に切実なのは入場料収入が低いという点です。3,000人、5,000人といったお客さんを入れようとすると、受け入れのための費用が膨らみ大赤字になってしまう。シニアでは入場料無料という試合も多いので、受け入れのための費用はスポンサーの負担となりますが、PGAとしては是非、お客さんを入れてほしいとスポンサーにお願いしています。そうした状況の中、去年、一番お客さんが入ったのが日本プログランド・ゴールドシニア選手権の8,000人です。スポンサーから(お客さんを入れた場合)費用はいくらくらいかかりますかという話しになり、8,000人を入れるとなると2千万円ほどでしょうかという提示をして、当初の協賛金とは別にご負担をいただいています。我々としては、無理にお金を取って入れるくらいなら無料でもいいのではないかと思う部分もあります。その代わり、会場内では最低限の対応しかできませんということをお客さんにも理解してもらってトーナメントを開催してはどうかと。つまり、ローピングも無ければトイレも最低限の数しかないですし、飲食についても弁当と飲み物くらいしかありませんというものです。場合によっては、弁当は無料でつけますからどうぞ食べてくださいということも考えられると思います。しかし、無料とはいっても試合自体が面白くなければお客さんは絶対に来ません。無料だからこのくらいの対応でいい、面白くなくても仕方ないというのは間違いです。無料だからこそ面白くなければならないし、無料だからこそそれ以上の価値がなければなりません。我々は今、そこに取り組んでいます。


順調に試合数を増やし続けているシニアトーナメント

順調に試合数を増やし続けているシニアトーナメント

─ 最後に業界関係者や業界に対してのメッセージがあれば

去年、提言書を提出させてもらいまして、その冒頭に書いてあるのですが、この提言書にあることが成功するかどうかは業界全体として取り組めなければ成功はしませんと。ゴルフ界全体でできないのであれば絵に描いた餅ですということが明確に書いてあります。それに提言書は単に方向性を示したものです。ですから、もっとこういうことができるのではないかというように皆で肉付けをしていかなければならないものなので、是非、たたき台としていただいて、皆で肉付けができるような場ができると良いなと思っています。特に2020年以降のゴルフ界というものはかなり厳しいものがあると思いますので、皆で力を合わせて行けたら良いなと思うのです。また、特に言いたいのは男子ツアーが活性化しないとゴルフ業界は盛り上がってこないと思います。現在、女子ツアーは素晴らしいパフォーマンスをされていますし、教育もしっかりとされています。しかし、残念ながら女子だけではゴルフ業界全体として活性化はしていない現実があります。また、女子がこれだけ試合数が増えた中で物販はどうかというと、こちらも伸びていません。時期が違うといいながらも、やはり男子の試合が多くなっている時代は物販業界も盛況でした。アメリカやヨーロッパを含めてもそうです。早く男子ツアーが盛況になって、物も売れて、ゴルファーも楽しくゴルフに親しめる環境になれたら良いなと思います。