PGA倉本会長インタビュー

tn20140501 強いリーダーシップで臨む!PGA立て 直しのみならず業界改革にも切り込む 反社会的勢力との交際発覚に端を発した理事改選の後を受けて、PGAの社会的信頼回復と発展への軌道修正を引き受けた倉本昌弘会長率いる新体制が発足した。倉本新PGA会長の目はPGAのみならずゴルフ業界全体の改革までも見据えている。今回、退路を断って臨むというその決意と構想を語ってもらった。

2月24日の総会で会長に選出されました。きっかけはいわゆる不祥事による執行部総辞職の上での再選挙。立候補に至る動機、現在の率直な気持ちは

まず不祥事があって、新しい執行部を選ばなければならないとなった。その時点では立候補しようという気持ちはありませんでした。私はJGTOを作った人間ですので、PGAの中には反倉本という方が少なからず居るということも承知しています。その意味でも私が立候補しても勝てる見込みは無いという気持ちでいたところに、その反倉本の人たちがやはりお前がやるべきだと。強いリーダーシップを持ってPGAを導いて欲しいという話を去年の11月くらいに頂いた。その時は固辞したのですが、暮れ頃に再びやってくれとの強いお薦めを頂いた。それでは各地区を回ってみましょうとなって、私が各地区の代議員、理事の方々に会いに行きました。事情を説明しお伺いを立てたところ、応援するよという話をいただきましたので、それではやりましょうとなって急遽、準備を始めた訳です。それが経緯です。

それでやるのであればPGA改革だけでは無く、ゴルフ界改革もやりたいと。PGAはゴルフ界の“one of them”ですから。ゴルフ界の改革をやるためにPGAの会長を引き受けると。つまりPGAの会長になりたいがために会長になった訳ではなく、会長になるのはあくまでも手段であって、私が会長になることによって発言権を増し、そのことによってゴルフ界全体の改革ができるのであればそれが良いのではないかと思いました。それでこれまでの会長選挙では例のないマニフェストを作って示しました。一般的に経営者はマニフェストを株主総会には出しません。なぜなら言質を全部取られてしまう。できなければ少なくとも批判の対象になりますからね。普通はやらないことを私はやります。言質を取られてもいいです。その代わりに6年間の時間を下さいと。自分としては退路を断って改革に進んで行こうという思いを掲げました。

それともう一つ、各ゴルフ団体ともいろんな危機感を持って、いろんな事を話し合っておられます。しかし、中々具体案が出ないし実行にも移せていない。実行に移されている団体もあるのですが、実質の効果が挙がっていない。

「総論賛成、各論反対」というのでは無しに、総論も各論も賛成しながら同じ方向へ向かって行きませんかという提案を早急にしたいと思っています。

総会直後の記者会見で新たに副会長を登用され、今まで理事でなかった若い顔ぶれもみられます。さらに外部理事に岡本綾子さんを登用された

まず岡本さんは過去に女子プロ協会の理事もされておりましたが、それから何年も過ぎて、現在では若い女子プロも育てるようになられております。それと世界殿堂にも入られている素晴らしい知見を持った女性です。実は私たちは女性理事を捜していました。私たちにはゴルフを教えるティーチングプロも大勢おりまして、女性も教えますし子供も教えます。それなのに女性の意見が取り入れられていないのはおかしいと。そうした意識の中で岡本さんの意見というのは貴重なのではないかと思いました。他にもいろんな候補がいらしたのですが私は岡本さんという希有な存在をどうしてもPGAに入れたいと思いまして口説きました。最初は岡本さんも固辞されていましたが説得を重ねるうちに最後は了承いただきました。

それから副会長の人事は、資格認証部門が大きな柱でもありますので、資格認証出身者の井上氏を登用しました。これはTPではなくTCP出身者で初めての副会長です。それから総務・財務担当の渋谷氏の登用は、プロゴルファーでありながら経営やいろいろなことができる人たちを作り上げていこうという構想の中で、彼はアコーディアゴルフのゴルフ場経営にも携わっていますから、そうしたノウハウを期するものです。植田氏は今回、理事に入っていきなりの副会長登用ですが、彼は私が競技運営部長をしていた時に下で働いてくれていましたから競技運営のノウハウを十分に持っています。今、逆風の中で船出をするにあたって経費削減も重要課題ですから、競技に出ながら現場で運営上のことを私も含めて兼務できるというのはかなりの経費削減になります。そうしたことでの登用です。

反社会的勢力排除対策としてコンプライアンス委員会を設置されました

昨年来、内閣府の公益認定等委員会とは書類を交わしてきまして、最終的に勧告書をいただいて、内容は協会ホームページにアップしてありますがその内容に沿って我々は改善をしていきます。その改善を進めるためのコンプライアンス委員会です。同様に危機管理も担う部署であり、同時に勧告書に沿った様々な施策を作るという部署です。今後5月30日までに勧告書に沿った我々の大きな方針を内閣府に提出することになっているので、早急に作り上げて提出します。そこからまた指導を受けながら改善を進めていくということになります。これは将来に亘って続けていかなければならないことですから、反社会的勢力排除対策については大きな意識を持って取組んでいきたいと思っています。その意味からこの委員会は外部の方々とゴルフ界の事情を把握している坂井副会長、阿部理事という過去の副会長でゴルフ界の古い体質も新しいこともわかっている方で構成しました。

新しい役員の選任が行われ倉本理事が会長に決定し、今後協会の舵取りを 行なうことになった。経営マニュフェストを掲げ、PGA改革を伝えた 倉本新会長(写真左から渋谷副会長、坂井副会長、倉本会長、植田副会長、井上副会長)

新しい役員の選任が行われ倉本理事が会長に決定し、今後協会の舵取りを
行なうことになった。経営マニュフェストを掲げ、PGA改革を伝えた
倉本新会長(写真左から渋谷副会長、坂井副会長、倉本会長、植田副会長、井上副会長)

過日の記者会見では今後はプロセスも含めて全て公表していくとの発言がありました

今回の勧告書も即日協会ホームページにアップしました。これまでのPGAには無かったと思います。それに勧告書を公表する協会なんてあるのかという話もありましたが私はやりますと。全ての膿を出し切るというのが私の考えですので。そうしたことが信頼を回復していく最初のステップになっていくのではないかと思う訳です。私は全てをオープンにしてそこから信頼回復をしていくという意識をしているので今回の勧告書もそうですし、第三者委員会の報告書も全てアップしました。これが新しいPGAの考え方だろうと思います。

改革の具体案で1997年の「PGAツアーオブジャパン」が理想だ、という真意は

この点は誤解を招くといけないところです。97年のPGAツアーオブジャパンは当時のGTPA鳥井前理事長の肝いりで作った組織です。これは主催者の方々も我々選手もPGAもこうした形態が一番いいだろうということで作りました。当時の社団法人日本プロゴルフ協会の中にPGAツアーオブジャパンという独自組織を作り独立採算でやるということなので主催者もそこにはお金を入れますし、選手もそこに所属することとなりました。PGAの理事会から独立したこの部分は独立採算でいろんな物事を決められるという形態です。ただ、この組織がうまく行かなくて最終的には、それでは外に出そうということになって、主催者の方々が後ろ盾になって下さりJGTOが出来たという経緯があります。外に出すということは実は私たちも本意ではなかった。PGAの中でやる方が遙かに良かったのではないかという気持ちも少なからずありました。だからこそJGTOを最初に作った時には多くの主催者は現実には同調してはくれませんでした。ですが選手がそこに居て、フェデレーションがそれを支援しますよという段階で最終的には主催者の方々もGTPAがそう言うのだから付いて行こうかということになったという経緯だと私は理解しているので、やはり97年に出来たあの形がベストではなかったのかというのが私の真意です。ただそれから17年近く経ってきて時代も組織形態も変わってきた。そうした中でもっと新しい形態が同じような形でできるのではないだろうかと。その第一歩が、男子レギュラーツアーがPGAツアーを名乗って欲しいということです。次に事務局の融合であり…というようにもっていけたらいいと思っています。今の形態でいうとPGAがホールディングスでその下にPGAツアーと、今でいうティーチング部門が2つできると非常に面白いなと思う訳です。

PGAツアーを名乗ることを提案されていると報道されていますが…

基本的にはJGTOを作った時もPGAツアーを名乗りたかった。ですがPGAを割って出ている訳ですからそれは名乗れなかった。それから15年、JGTOとしてゴルフツアーを運営していったのですが中々JGTO自体の知名度が上がらない。ブランドの訴求効果があまり無かったと私は思います。ならば2015年から選手の出場資格に関する規程が変わるので、それを機にPGAツアーを名乗ってもらえないだろうかと。PGAツアーというのはやはり大きなブランドでアメリカもやっている。実際にPGAツアーを名乗っているのはアメリカしかありません。一国のツアーであるならば私はPGAツアーでやるべきだと思うのです。

PGAスクールということに関して言及されておりますが

実際にわかりやすいようにスクールという言い方をしました。基本的にゴルフ練習場が2,300ヶ所くらいあって、ゴルフ場を含めると約5,000ヶ所あるうち、1,000でも2,000でも私たちが人材を派遣できる環境が出来れば、職場も広がりますし、そうした人材育成も進めています。ただ現状では需要と今ひとつマッチしていないように思えます。

ゴルフ人口の底辺拡大の点でも提案をされていますが

かなりの大学で授業としてのゴルフが行われています。例えば東北福祉大学では200人くらいの生徒がゴルフ部とは別に授業としてやっている。教えているのはゴルフ部の生徒だったりしている状況だと聞きました。ならば我々が講師で全国の大学に行きますと。そうしたことも若者がゴルフに目を向けてくれるひとつの方策ではないかと思うのです。

ジュニア育成という点ではどうでしょう

まずLPGAのように子供達に特化したティーチングプロを作ってそこから上に上げていく。専門ティーチングプロが扱って、あるところからJGA側に行く。つまり競技です。またある時には我々側の一般アマチュアへ行くというような道筋を付けるようにする。

それとトーナメント毎にもジュニア対策で様々な努力をされています。ですがツアーとして一貫して何かをやるということは全く成されていません。個々のトーナメントだけの取組みではひとつひとつで完結してしまう。同じお金を使うのならツアーとして年間を通して一貫してやるという姿勢を持たないとこれは成就しないと思います。 tn20140503

シニアツアーの活性化は今後どのように考えますか

シニアツアーはPGAの業務ですし、私がやはり一番の営業マンだとも思うので出場もして営業もしていきたいと思います。ただ200人弱くらいの選手しか出られないツアーを30試合になどと言ってもあまり意味がないように思います。一試合の規模を大きくしながら、できたら最低でも賞金総額4,5千万円で15試合くらいまでのところで開催できたらというのが私の考えです。

JGTOとの連携でいくつか共有や融合、交流などについて言われていますが

大きな構想として一つの大きなビルにPGA、LPGA、JGTOが入っているとします。そのビルに行くとゴルフ界の全ての人に会えるというようなことが理想だと思っています。また、例えば一階には打席があって、スタジオもあって、そこで我々の番組を作っているというような事も最終的な理想です。でも、いきなり皆で集まってやりましょうと言ったところで誰も集まらない。そこでまず今できることからということで、もともとは同じ組織でしたからJGTOとできることを一緒にやろうということです。

JGTOは15年間培ってきたノウハウがありますしPGAもノウハウを持っている。これがうまく合わさって、GTPA主催者の方々に利益になるノウハウとなるならばそれが一番良いと私は思っています。たとえば双方の競技委員の融合とか。

ただ、重要な点を断っておきますが、今、いろんな記事でJGTOとの協力云々ということだけがクローズアップされていますが、実はPGAとJGTOが協力すると言うことはGTPAが少なくともオーソライズしてくれないとできないことです。これを機に主催者とPGAとJGTOが一つの輪になることが大切だろうと思います。GTPA主催者を差し置いて勝手に進めていけるものではないというところをご理解願いたいと思います。

PGAの改革だけではなくゴルフ業界の改革というところでの構想は現在5,280余名の会員がおりまして大半がゴルフ業界に関わっております。ゴルフ業界は今1.5兆円くらいの市場規模でしかなく、その内レッスン業界は120億円くらいしかない。この中にはLPGAもいれば無資格者もいます。そうなると1万人近い人たちがレッスン業界に携わっているのにパイが120億円しかない。単純に割ると1人あたり120万でしかない。これは大きくしないと皆食べていけないのは当たり前です。私たちも増えていく、LPGAも増えていく、無資格者も増えていくとなればパイを大きくするしかありません。

そのためには私たちはティーチングプロの会ですが、その上には光り輝くツアーというものがあって、ゴルフとはこんなに素晴らしいとアピールするところがもっと光り輝いてくれないとパイを広げようにも広げられません。

1年間の男女を合わせて、観客動員数が一週間のプロ野球の総動員数にも満たないというのはおかしいでしょう。ここが一番の問題ではないかと。視聴率云々というは別の話として、やはり現場に見に来てくださるお客様をいかに増やすかということをもっと真剣に考えないといけない。ここをひとつの突破口として皆でどうやれば人を増やせるのかということに焦点を絞って話し合うことが重要でしょう。いろんなことに目が向き過ぎていると思います。もし、「焦点は他にある」というのならそれを出して頂きたい。私は観客動員だと思っています。

それから、よくゴルフのトーナメントはお金がかかり過ぎるからダメなんだといろんなところから話が出てきます。主催者の方からも出ます。また、景気が悪いからお金が出せないとも。では景気が悪い中でどうしたらお金を出してもらえるか、どうすればコンパクトに出来るのか、これだったらどこまで許せるのか、選手はどこまで許せるのか、主催者はどこまでなら許せるのか、テレビは?JGTOは?という踏み込んだところまでの議論が全くなされていません。

沢山の提案や構想があると思いますが最後に何かひとつ挙げてもらえますか

今、ゴルフ場利用税というのは500億円くらいあります。これはJGAを含めて業界で無くそうと運動されていて、オリンピックのことも見越して本来はあるべき税ではないということは理解しています。しかし、長い間をかけて何か進展があったかというと無い。一方で、ゴルフ界としては無くしたいが地方自治体ではこれが無いと財源として成り立たないということがあって、毎年の予算には上がっている訳です。こうした論争は止めた方が良いのでは…。廃止云々に力を注ぐよりも500億の1割でもいいからゴルフ界に還元する目的税にしてもらえませんかと。1.5兆円のゴルフ界のパイがある中で未来のゴルファーを育てるための基金はどこにもありません。例えばジュニアの育成にかけているものが未来のゴルファー育成の基金だと言われたらそれまでですが、これは各団体が予算をとってやっていますが縦割りでやっているので実効が薄い訳です。それなら1割の50億円を我々ゴルフ業界に目的税として返してもらって、それを未来のゴルファーを作るための費用として活用できたらと思うのです。それで一部はJGAがナショナルチーム強化に使うということでも良い。未来のゴルファー、光り輝くゴルファーを作るためになります。また、全くゴルフをやったことがない人への機会創出として、例えば大学にゴルフの授業をするためのクラブを配る基金にしましょうとか、そういうことで毎年50億を使えたら、とてつもないことが出来ると思います。私はそう提案したいと思います。